第2章 花嫁はどうして来るのか[6]

@筆者:五味洋治プロフィール [ 2011年 6月 10日 ]

競争心

文さんの率直な告白を聞きながら、私は彼女たちの日本行きをすべて金目当てと批判できないのではないかと思い始めていた。
彼女たちが日本に来るのは、一種の競争心かもしれない。隣の家が新築された、いい車を買った。それなら自分の家もーそういう気持ちだ。結婚を通じて、いきなりリッチになれるという誘惑だろう。
中国では、地方出身者への差別は厳然として存在する。いくら経済発展が続いている中国でも、事業に成功して、日本円にして500万円もする家を簡単に建てることはできない。
中国の物価は日本の10分の1だから、この家はかなり高級な家になる。それが娘が日本に嫁げば実現してしまう。
現地の女性は「日本人は優しいし、暴力夫にあう確率は中国よりも低い」とも言う。身体を張って金を稼ぎ、親の面子を立てたい。昔、日本でもこんな女性たちがいたような気がする。
日本人はもっと簡単に、楽観的に考えるべきなのかもしれない。
彼女たちは経済移民である。アメリカにも経済移民はたくさんいるが、いちいち「何の目的で来たのか」などと聞く人はいない。移民するのに手っ取り早い「結婚」を使うのには抵抗感もある。日本への「航空チケット」代わりにされる男性はたまったものではない。しっかり言葉を学び、時にはアルバイトもしてその国のことを知ることが理想的だろう。
しかし日本よりも急速に経済成長し、いきなり物に恵まれた若者は、すでに生活を質素にすることはできない。日本に来る女性たちは、そのまま大国となった中国の矛盾も象徴している。
他にも魅力的な国は多いのにわざわざ日本を選んでくれたのだから、できるかぎり歓迎してあげたい。
そもそも国際結婚が盛んな国同士では、紛争が少ないという。拡大し、強大化する中国から女性たちがわざわざ日本に来ることのメリットをもっと生かしたい。

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広がるネットワーク

結婚して日本に住み始めた方正県出身の女性は、見よう見まねで結婚紹介業を始める。
1回結婚を実現すれば、手数料として七万元(約一〇〇万円)程度が手に入るからだ。自分も支払ったから、よく知っている。協力者に配分しても、かなり手元に残ることになる。新しく来た女性も仲間になって日本人男性探しを始める。
だからネズミ講式に、にわか紹介業者が日本に増えていく。千葉県八街町に住む50代の須藤明子さんもその1人だ。
子育ての合間に携帯電話一台を使って、中国人との結婚を考えている人から電話を受け、現地の協力者に連絡して適当な女性を紹介する。
友人の紹介という名目で私が結婚相手を探しているということで相談に行くと「ドクシン?キビシイネ、キビシイ。中国に何回も行かないと、入管(入国管理局)は信じてくれないね」と警戒を露わにした。
「どんな人がいいのか」と聞いてくるところをみると、現地には人脈があるらしい。いやよく聞いてみると、人脈どころか、現地の公安(警察)や役所に親戚がおり、方正県出身者なら、その人の家族環境、過去の結婚歴、仕事歴まですべて分かるという。また、戸籍の原簿も取り寄せることができるとも言っていた。
須藤さんも、日本に来るときやはり借金をしている。それを返すために、結婚紹介をサイドビジネスとしてやっているのだ。人脈と電話だけででき、うまく行けば労せず、100万円以上の金が入ってくる。これは国際化時代の、おいしいビジネスである。
彼女たちのパワーが、日本で国際結婚を広めている。

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